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今月のこづかい全部100円

わたしは芸祭でフリーマーケットをするのだ。そのために、今月のおこづかいを全部釣り銭用の100円玉に両替したのであった。

そして芸祭当日。私は大きなスーツケースで運搬した商品を自分のスペースに並べた。隣のスペースでは、韓流アイドルっぽいメイクの留学生2人組が、外国語で何かを話し続けている。会話の内容がわからないことになぜか安心をおぼえた。もう片方のお隣は、ものすごく気合いの入った森ガールっぽい人だ。

時間になり、芸祭が始まった。森ガールっぽい人は売り込みの殺し文句を持っていて、商品はどれも外国から輸入(?)したという人目をひくキッチュなものばかり。お隣にはたちまち人だかりができたが、わたしはコアラのマーチ片手に過ぎ行く人々に向かってあいまいに会釈することしかできなかった。私の商品をちらっと見て、ふっと目をそらす人々に心が痛んだ。

マッチ売りの少女の物語のように、暖かい我が家や、その他さまざまな抽象的なことが心に浮かんだ。しかし「もう帰りたい私の存在」だけが唯一の事実であった。(コギト・エルゴ・スム)
うっすら降り続けていた小雨が、ふつうに傘を差したいぐらいの雨に変化した。気合いで乗り切れないものがある。私の撤収するスピードは誰にも負けなかった。無邪気に「50枚じゃ少ないかな〜」と思っていた私の売り上げは、友だちが買ってくれた一枚ぽっちであった。

「時代が追いついてないと思えばいいのか・・・・・・」

これで自信を失わずにいるということは、少し狂気をはらんだ人でないとできないだろう・・・と私は思った。だが一方で、「おかしいだろ!??!!??」というやり切れない怒りもあった。

「なんで売れない・・・・・・・・・・・・!!!!?????????!!!!?????????!!!!?????????」

私の中で、劣等感・ちょっとの自信・どうでもいい気持ちとが三つ巴の戦いを繰り広げていた。

【今日の一句】
秋空は さまよう心 うつしてる